LE PASSAGER DE LA PLUIE(1970) RIDER ON THE RAIN[USA]

LE PASSAGER DE LA PLUIE(1970)
            ~雨の訪問者
チャールズ・ブロンソンCharles Bronsonを、
一躍、世界的な人気スターに押し上げたサスペンス映画の秀作です。(・∀・)つ
「さらば友よ」でも脚本を書いたセバスチャン・ジャプリゾが、ブロンソンに惚れぬき、
ブロンソンが演じる事を念頭において書いた作品だけに、見事なまでに彼の魅力を
引き出した作品になっております。

そして、わが愛するブロンソンの主演作の中でも一番好きな作品であります。(^∀^)

雨の訪問者監督: ルネ・クレマン
製作: セルジュ・シルベルマン
脚本: セバスチャン・ジャプリゾ
撮影: アンドレア・ヴァンダン
音楽: フランシス・レイ

出演: チャールズ・ブロンソン
    マルレーヌ・ジョベール
    アニー・コルディ
    ジル・アイアランド
    コリンヌ・マルシャン
    ガブリエル・ティンティ

フランス映画 1970年4月公開
   (上映時間2時間)



(STORY)
初秋を迎え、人気(ひとけ)のなくなった南フランスの避暑地。
そんなある日、降りしきる雨の中、一人の男がバスより降り立ちます。
グレイのコートに赤いバックをさげ、雨の中を歩くその男は、眼光鋭く
無気味な雰囲気を醸し出していました。

そんな男の様子を偶然見ていたメリー(M・ジョベール)。
この時はまだ、彼女自身の身に降りかかる恐るべき悪夢のような出来事を
知る由もありませんでした。

その夜、パイロットの夫がフライト中で不在の為、一人で家で過ごしていた
メリーに、どこからともなく侵入して来たあの男が襲いかかってきます。
メリーは、家にあったショットガンを持ち出し、地下室にいた男を撃ち殺し、
死体を断崖から海へ投げ捨てます。――

しかし、その後彼女の前にもう一人、謎のアメリカ人が現われます。
その男はドブス(C・ブロンソン)といい、彼女に「男を殺しただろう。」と
問いただしますが、彼女はそれを否定します。
その後も彼女の周りをドブスは付きまといます。ドブスの目当ては殺した男の
持っていた赤いバックで、その中には大金が隠されてるらしいのです。

当初から、その赤いバックの存在を知らなかったメリーは、偶然、
駅で赤いバックを見つけますが、金は無くその代わりに夫の秘密に関わる
証拠が入っていました。どうやら、夫はパイロットという仕事を利用して、
各地に女を作り、密輸にも加担しているようなのでした。そして、信頼して
いた女友達も夫と関係があることを知り、ショックを受けます。

警察も、殺人事件で動きだす中、殺された男の情婦が犯人としてあげられます。
情婦が無実の罪を着せられた事に、責任を感じたメリーは情婦の住んでいた
パリに赴きますが、そこにいた男たちに拷問されてしまいます。
しかし、駆けつけたドブスが、男たちをなぎ倒しメリーを救います。

ドブスに抱きかかえられたメリーは、一体自分の身の回りで何が起きているのか
わからなくなってきました。まるで、迷宮に迷い込んでしまった不思議な国の
アリスのように悪夢を見ているのか――。

やがて、メリーは事件の全容を知ることになります。
情婦が殺した犯人は全くの別人で、同時期に起こった無関係の事件だった事。
そして、メリーが殺した“雨の訪問者”は、軍の公金を横領した犯人で、
ドブスはその男を追ってきた軍の将校である事。――

問題の赤いバックもメリーの車の後部から出てきました。
男が後部に潜んでメリーの家まで付いてきた際に置きっ放しにしていたのでした。

海から引き上げられた死体の手には、殺人の証拠となるメリーの服のボタンが
握られていました。しかし、ドブスは「君が捕まっても誰も得はしない」と言って、
ボタンをメリーに返して見逃します。

夫と共にロンドンへ行くメリーを笑顔で見送るドブス。
彼女が去った後、ドブスはクルミを使ったゲームをします。
―クルミをガラスに投げてガラスが割れれば、相手に惚れている―。
さっきまでは、何回投げても割れなかったガラスが、ついに割れてしまいます。
知らないうちにメリーに惹かれていた自分に、ドブスは苦笑いを浮かべながら
夕闇迫る海辺の町を去っていきます。

                 ☆★☆

物語の核心が見えてくる後半まで、話の全体像がハッキリしない為、
主人公の女性と同様、観客も惑わされ、ややっこしい印象を受ける物語ですが、
感傷的で人生の悲哀も感じさせるようなムードたっぷりの演出が、そのへんの
弱点を感じさせない見事さです。さすが、ルネ・クレマン。名匠のお仕事です。

そして、そんななかブロンソンが実に楽しそうにナルシシズムたっぷりの
演技を展開します。(^∀^)
特に、ブロンソンのライフワーク(笑)でもある“引き際の美学”の集大成が
この映画のラストシーンに結実します。
このラストシーンだけでも、(ブロンソンファンには)一見の価値ありです! 



                 ☆★☆

ただこの作品、ブロンソンファンの間でも賛否両論があるところで、
最高傑作にあげる人も多い一方、今ひとつと見るむきもあるようです。

というのも、この作品の主役は女性であり、彼はあくまで影で支える(にしては
目立ちすぎですが、笑)ダンディなおじさま役なので、埃まみれの西部男や
街のダニを蹴散らす影の処刑人役などのアクション全開のブロンソンに魅力を
感じる方には物足りないかもしれません。

もちろん私もアクション全開ブロンソンは好きですが、この映画のこそばゆい
ばかりのダンディなナルシストぶりはたまりません。笑